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S-65 による SCAMIN の付与


IHO から航海用電子海図作成ガイドラインである S-65 Ed.1.2 がダウンロードできます。SCAMIN は古くて新しい問題で、SCAMIN を付与する事により画面上で縮小された航海用電子海図は見やすくなりますが、縮小表示により重要な情報が見えなくなってしまうと、航海の安全に影響を及ぼします。

S-65 では、オブジェクトと属性及び属性値の組み合わせ等の条件で、SCAMIN を相対的に付与しています。例えば、オブジェクトがLNDMAK (Landmark、著目標)の場合、CONVIS (Conspicuous, visually、視認性) が 1 (visually conspicious、顕著に見える) 時、または、CONRAD (Consupicious, rader、レーダーでの視認性) が 1 (rader conspicious、レーダーで顕著に見える) 時、または、FUNCTION (Function、機能) が 33 (light support、ライトサポート) の時は、その航海用電子海図の編集縮尺より3段階上の SCAMIN 値を付与します。編集縮尺が 1/12,000 なら、3段階上の SCAMIN 値は 29,999 になります。

SCAMIN は重要度と関係があり、これを、オブジェクトと属性及び属性値を基準として自動的に決定する事は合理的な考え方なのですが、残念ながら S-65 で規定された組み合わせのテーブルは、バグや不明瞭な記載が多々あり、これを、そのまま採用するとかえって危険な場合もあると思われます。

さて、S-65 自体は不完全な部分もありますが、これを元に、点情報のみ SCAMIN 値を付与してみました。ターゲットにしたのは、マニラ港の航海用電子海図です。下の図は、表示縮尺が 1/11,999 です。



この航海用電子海図は編集縮尺が 1/10,000 なので、この状態では SCAMIN 効果が効いていません。最初の段階の SCAMIN 効果が発生する縮尺 1/12,000 で表示したのが、下の図です。



どこが違うのでしょう?「間違い探し」ですね。正解は、こちら

水深に対する段階的な SCAMIN の付与は、S-65 ではオプションとなっています。しかし、このオプションを実施しないと、全てを表示しても水深値の表示に SCAMIN 効果が効いているので、以下の図の様に表示縮尺 1/12,000 で水深値が全く表示されなくなります。



この例では、水深値を画面で見るためには縮尺 1/19,999 以上に拡大表示する必要があり、あまり実用的ではありません。

SCAMIN 効果が次に発生するのは、表示縮尺が 1/18,000 です。前後で比較してみます。まずは、1/17,999 での画面です。



次に、表示縮尺が 1/18,000 の時の画面です。



これまた、「間違い探し」になってしまいました。正解は、こちら

では、さらに、次の SCAMIN 効果が発生する縮尺ではどうでしょう?まずは、縮尺 1/21,999 の画像です。



次の画像は、縮尺 1/22,000 で表示したものです。



やっと、何となく違いが見えてきました(違いは、こちら)。しかし、違いで顕著なのは水深の数が減った事です。水深以外の点情報については、違いがわかりません。この時点で気がつく事は、水深について SCAMIN を丁寧に付与しない限り、S-65 で規定された SCAMIN はあまり意味をなさない事です。この実験では、線情報について SCAMIN を付与していないので、例えば、道路は 1/12,000 で表示されなくなってしまいますが、これによって、航海用電子海図の見易さが向上する訳ではないでしょう。

最後に SCAMIN 効果が現れるのが、縮尺が 1/30,000 の時です。一つ上の画像含まれる情報を縮尺 1/29,999 で表示すると、少し込み入った画像になります。



下の画像は、表示縮尺 1/30,000 です。



水深が相当省略された表示になります(違いは、こちら)。水深に対する SCAMIN 付与を間違えると、航海の安全に支障をきたすので、細心の注意が必要である事は、言うまでもありません。

さて、最後に ECS ではどのように表示されるのでしょうか?ORCA Navy で検証してみました。



画面の中央から上にかけて、グレーの枠が見えます。これが、SCAMIN を付与した航海用電子海図です。周りを囲んでいるのが、一段階小縮尺の航海用電子海図です。編集縮尺の異なる2セルの航海用電子海図を重ねて表示しています。グレーの枠がないと、セルの継ぎ目がわからない位連続性の高い表示になります。

もし、S-65 でオプションとなっている水深の SCAMIN を段階的に付与しなかったら、以下の様になります。



画面中央の大縮尺をはめ込んだ領域の水深は、全く表示されません。これではチョット間抜けです。




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